KYOTOGRAPHIE アフリカン・レジデンシー・プログラム
共催:出町桝形商店街
「ミルクと蜂蜜は、色は違えど同じ器のなかで仲良く暮らす」── アフリカのことわざ
京都での滞在制作で、タンディウェ・ムリウは日本の伝統的な染織工芸の世界に深く没入
しました。そして、京都の布をめぐるこの旅から生まれたのが、〈Camo〉シリーズの新たな
展開となる、〈More Than Half〉です。このシリーズで、ムリウは帰属意識やコミュニティに
おける居場所について考察しています。
ここでは、ムリウの関心は「カモフラージュ」から「共生」へとシフトし、日本文化を象徴
する着物をまとった被写体の背景に、「アフリカらしさ」の象徴として広く知られるワックス・
プリント(ろうけつ染め)を重ねています。このシリーズを通じてムリウは、ふたつの文化に
またがるアイデンティティを持つブレイジアン(アフリカンやアフリカン・アメリカンなどの「黒人」
とアジア人のミックス)の女性たちが置かれた状況に光を当てようと試みているのです。
日本では近年多文化共生がうたわれながらも、外見だけで「日本人」かどうかを判断する
思考や習慣が未だにあり、中には「日本人か、日本人以外か」を区分する人もいて、ブレイジ
アンたちが持つアイデンティティの二重性は時として苦難がともないます。血縁上の両親
のひとりが日本人、もうひとりが外国籍の人への呼称である「ハーフ」という言葉には、
かれらを「不完全」と前提づける意識が映し出されているかのようです。ムリウのポートレート
が訴えかけるのは、たとえ異なる複数のルーツを持っていても、それらは切り離されることなく
溶け合い、ひとつの存在を形づくっているという事実です。ムリウは、「すべてのものは根源に
おいては一体である」という思想を指す仏教用語「一如」の精神を引用し、たとえわかれて
いるように見えたとしても、すべてのものはその本質においてすでに完全である、という考えを
示しています。
ムリウは、肌の色のグラデーションをカラーパレットとして用いることで、さまざまなアイ
デンティティが重なり合い、分離し、そしてまた融合する様子を表現しています。そうした行為
を通して、ムリウは「純粋さ」が担う固定概念に問いを投げかけます。「一如(Ichinyo)」は、
帰属意識が類似性や共通性によって規定されるのではなく、個々の存在によって拡張していく
世界を提唱しているのです。
▍タンディウェ・ムリウ|THANDIWE MURIU
アイデンティティ、カルチャー、女性のエンパワーメントといったテーマを作品を通して探求するケニア出身のアーティスト。ムリウの作品は、主にワックス・プリントや東アフリカのカンガ布といったテキスタイルの物語から着想を得ており、それらの布をキャンバスとして再定義し、称え、記憶するために作品に用いている。現在もケニアを拠点に活動し、ラゴス芸術センター(ナイジェリア)が主催した第60回ヴェネツィア・ビエンナーレのコラテラルイベント(同時期開催の企画展)「Passengers in Transit」、「WAX!」展(人類博物館パリ)、ニューヨーク大学での個展「I Am Because You Are」など、世界各地で作品を発表している。また、ロックフェラー財団ベルラージオ・センターのレジデンス・プログラムや、ケニア国立博物館のレジデンス・プログラムにも参加している。
▍展覧会概要
タンディウェ・ムリウ|THANDIWE MURIU
「一如」
2026年4月18日(土)-2026年5月17日(日)
時間:11:00–18:00(金・土曜日は21:00まで)
休館日: 4月20日・21日・27日、5月7日・11日
※入場は閉館の30分前まで
祝日や貸切により、営業日時が変更となる場合がございます。詳細はInstagramをご確認ください
会場:DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Space
(602-0826 京都市上京区桝形通寺町東入三栄町 62)