京都で生まれ育ち、日本とブラジルを行き来することで自身のアイデンティティを培い、生きる感覚を得ようとしてきた写真家、荒川幸祐。ブラジルは先住民の地であり、そこに植民地支配者が強制的にアフリカの人々を奴隷労働者として連れてきた。そしてその後も多くの国々から多様な移民が流入した。様々な宗教、風習、人種が混在するブラジルという国。大げさな日差しのように作られた新しいブラジルのイメージの陰には、荒川が身体と魂で感じる強いエネルギーが存在する。
荒川がカポエィラを通じて発見したそのエネルギーの根源は、ブラジルの中に深く混しじり込んだアフリカ性だった。”Afro- アフリカの”自らのアイデンティティとして“Afro-Brazil”であることを選び取り、ブラジルの地で体現する彼ら。人は伝えられた中から、自身のアイデンティティとして何を受け取り、それから何を伝えていくのか。そして荒川自身はこれから何を伝えていくのか。幾度も通った日本とブラジルの軌跡に自身を投影しつつ、この写真展は開催される。